並走

眠い。学生達が春休みだという事は、俺が仕事だという事。夜は普段通り授業で、朝はいわば春期講習。こんな爽やかな春、花咲き乱れる朝10時から働くなど、人間のする事じゃない。奴隷の所業。嗚呼、俺は奴隷。大都会の、キャピタリズムの、文明の奴隷。眠い。
1週間続けて朝から両国に通っている。3月半ばからの怒涛の日々、疲れが取れないままの体を今日も満員電車に突っ込む。もはやヒゲも剃らない。だって奴隷はヒゲなんて剃らないだろう?
ああはやくごしゅじんさまのみぶんになってそるがわのたちばにたちたいものだなあ。
王子を通過する。駅前の公園は桜が満開。満員電車で密着してくるオヤジのスーツの袖に干からびた米粒が張り付いている。
日暮里ステーションにブリーフストップすると、俺が乗っている京浜東北ラインと並走する山手ラインの車両全体に、アッキーナの神ポスターが貼り付けられている。
あっきーな。おっきーな。おっきーなあっきーな。あああっきーな。おおおっきーな。お、おっきな、のっぽのアッキーナ
ああ、大都会の、キャピタリズムの、文明の奴隷にはなりたくないけど、アッキーナの奴隷にならなってもいいな。
ていうか既にアッキーナの奴隷といっても差し支えない。
ていうか既にアッキーナの奴隷といっても差し支えない。


はてなでも書こうかな。一年ぶりくらいに。春だし。などと思う。


窮屈な車内ではてなを開くと、懐かしい日記がまだ見られた。京浜東北線は山手線と並走しながら、堤防に桜が咲き乱れる川を渡り始める。アッキーナとお花見だ。見つめ合う俺とあっきーな。あははははっっ、、、うふふふふっっ、、、
あの頃も両国に通っていた。あの頃も桜が咲き乱れて、川を流れていた。
上野駅でも列車は同時にホームに到着する。そういえば、あの頃、俺アッキーナと付き合ってた気がしてきた。あー可愛かったな〜。さすがに可愛かった。でもアイツまだ青くさいガキだった。男の愛し方も知らなかった。あんな風に挑発的に笑うことなんて知らなかった。
俺が教えてやったんだ!いやらしい目付きで山手線のアッキーナを盗み見ているサラリーマンよ!アッキーナに、その天使の微笑みを教えてやったのは俺なんだ!!
まあ当時は長澤まさみとも付き合っていたんだが。そういえば。俺が育ててやったんだ!長澤まさみの胸が、、、(ry
いや、今どき(ryではなく「自重」とでも表現するのか。胸自重。長澤まさみの胸自重。長澤まさみの胸があれほどまでに自重。大きくなったのは自重。俺が頑自重。張っ自重。て自重。育て自重。。。
アッキーナと別れて良かった。アイツはブレイクしたし、俺は大人になった。
ああ、大人になるって、選択をすることなんだなあ。重ねた選択が愚かな言動を抑制するんだなあ。
御徒町駅を出ると京浜東北線と山手線は並走しなくなる。アッキーナが遠ざかってしまう。
御徒町駅のホームでの別れ際に、アッキーナの微笑みを目に焼き付けたくて、向かいの山手線をじっと見つめていると、いつの間にか涙が溢れて、気がついたら俺は無機質に閉じる通勤列車のドア越しに叫んでいた。



アッキーナ!!俺、、お前のこと、、絶対に忘れない!!」



列車はアッキーナと別れて進み、秋葉原京浜東北線を降りる俺の足取りは重い。秋葉原を行き交う人間なんて変態やろうばかりだし。
次の瞬間、視界の端をとらえたものに、俺は驚き立ちつくした。なんと、俺が乗っていた京浜東北線の車両にも、アッキーナのポスターが全面に貼り付けられていたのだ。俺はずっとアッキーナのポスターが貼り付けられた車両に乗っていたのだ。
どうして乗り込む時に気が付かなかったのだろう?ずっと一緒にいたのに。ずっと一緒にいたんだ。おそらく俺は、群衆に、大都会に呑み込まれてしまっていた。
そう、、あははっ!そうだっ、、そうだよねっ!
僕たちは違う道を選んだけれど、今までも、そしてきっとこれからも、ずっと一緒なんだ。そうだろ?アッキーナ
あああっきーな。可愛いよあっきーな。