ギター少年とカレー明太子

淡路町のスタバで朝ご飯&音採り。雨が上がっていく。僕の席の前の大きなガラス窓は、大きな交差点に面している。スーツ姿のサラリーマンが大勢通り過ぎる。店内は勉強する制服姿の男子高校生が2人だけ。属する場所がない私服の僕は、この街では浮いてる。まさか学生には見えないだろうし、どんな風に見られているのか。落ち着かない。
「ギター少年/サカノボルト」。ヤバい。格好いい。イントロを聴くだけでゾクゾクする。
Aメロは少年が自分の狭い世界に閉じこもって、ギターと作曲にのめり込んでいく姿が描かれる。がむしゃらな若さと若者特有の微笑ましい偏執が疾走感に溢れる演奏で表現される。
Bメロは「君」への恋心が描かれる。「君」は若く素朴な少年には手が届かない憧憬の対象である。少年は何も手に入れられないし、何も諦められない。行き場を失った若さという偏ったエネルギーは音楽に向けられる。ハーフテンポ。浮遊感に満ちた甘酸っぱい演奏である。
編曲も演奏も全て完璧。黒田さんは今でもギター少年のつもりなのだろう。しかし僕から見ると、黒田さんは何も手に入れられない少年などではなく、着実に自分の音楽表現を確立しつつある偉大な先輩である。
では僕は?何も手に入れられない。何も諦められない。でも若くもない。
そういえば、月曜日にこんな事があった。夜、僕はパスタを茹でた。レトルトの明太子ソースをかけて食べるのだ。月9のドラマをぼんやり眺めて待つ。茹で上がったパスタをシンクに置いたざるに流し込む、つもりだった。鍋の持ち手が熱い。熱いわー!!このSON OF A BITCHが〜〜!!僕は思わず手を離す。
ざるの隣には、洗っていない皿がそのままになっている。前日、その皿でカレーを食べたのだ。暑い日だった。その皿は既に古い赤ワインの様な腐臭を放っている。
ひぃいい〜!!俺のパスタが!!俺のパスタがその皿に〜〜!!
パスタとパスタの茹で汁と昨日のカレーが混じった皿を前に僕は立ちすくむ。
1、捨てる。2、食べる。
究極の選択だ。そのパスタが最後なのだ。もう家に食べ物は残っていない。
「諦めたらそこで試合終了だよ。」深津絵里が言う。
そうだ!その通りだ!!何かを諦めることで、手に入るものだってあるだろう。しかし、本当に手に入れたいものは諦めちゃ駄目なんだ!!だって、、、諦めたらそこで試合終了なんだから。
食べた。カレー明太子スパゲティ。不味かった。