つきしまで/おもひをはせる/おれまつり

今日は月島で家庭教師の面接だ。早く着きすぎた。散策する。
月島は面白い街だ。高層マンションの足下には緑豊かで広大で嘘臭いマンション付属の公園がある。公園からは隅田川が一望できる。曇った隅田川を眺めながら、アガペーとエロスについて想いを馳せるロマンティックな俺(26)。
公園を出ると隅田川に流れ込む淀んだ水路がある。流れがほとんどない。臭い。その水路沿いには渡し船屋の跡や古い銭湯が雑然と並んでいる。豆腐の行商人までいる。変な笛を吹いている。ちゃんと「とーー、ふーー♪」って聴こえる。昔ながらの風俗に触れ、ちょっと感動する。しかし、そんなチープな感傷は持ち合わせていないぜ、的クールっぷりで追い越す、ドライな俺(26)。
月島駅前まで戻ると、偶然お祭りをやっている。西仲通り商店街とやらに無数の屋台が並んでいる。商店街の入り口には「アイスキャンデー」を売るおっさんが飽きもせずに小さなベルを振り続ける。うるさいんじゃーー。とは思ったものの、浴衣ギャルの姿に引き寄せられ商店街を歩く、お茶目な俺(25)。

子供たちが年に一回のお祭りにハシャぐ。はじける笑顔。彼らは大人になってもこの風景や匂いやざわめきを忘れることはないだろう。それにしても、、ガキども、うざいんじゃーーーっ!!!後ろ向きに走るんじゃない!!親もガキにお好み焼きとかを持たせるんじゃない!!マヨネーズが付いたらどうしてくれる?とばかりにヒラリヒラリとSON OF A BITCHのマヨネーズ爆撃を華麗にかわす、反射神経抜群の俺(25)。
浴衣ギャルの姿を追いかけて商店街をさらに歩く。浴衣って本当にいいよね。何がいいかって、やっぱり浴衣って準備が面倒だと思うんだ。そんな面倒臭さを乗り越えられるのは、「ほんの少しでもあの人にドキッとして欲しい。」って思うからじゃないかな。実際見せる機会がなくても。年にせいぜい2、3回しか着ないものを散々悩んで買い、保存し、一生懸命着付けする。アクセサリーに迷う。「あの人はどっちが好みかな?」なんて考えながら。いそいそと髪の毛をあげる。うなじが吼える。そんな過程全てが萌えである。こうして一年間蓄積された「萌エネルギー」が浴衣姿には集約されているのだ。などと極めて論理的に考える、ロジカルかつクリティカルな俺(25)。
「真山に見せたくて、健気に浴衣を着付けて、真山が来てとりあえず誉めてくれて、メチャクチャ嬉しくて、でも真山は自分好きになってはくれないことを再々々確認して、涙を流す山田さん」萌え〜。山田さん萌え〜!!鉄人萌え〜〜!!などと少女漫画も読みこなす女心マエストロ、俺(25)。
面接。うーん、こんな超高層マンションの最上階か。お母さん綺麗。
面接終えて、別の家庭教師先に。帰宅。萌え尽きた。