ああ、今日はアイツが家に来る。俺はアイツをもっと大切にしてやらなきゃいけない。

アイツが来る前に部屋を掃除しなきゃいけない。散らばったコンビニ弁当の容器や、汚れた衣類を片付ける。トイレ掃除と風呂掃除。
カーペットをコロコロして、フローリングを磨く。ベッドの下やオーディオの間の埃を払う。窓を磨く。
この際、アダルティなモノは全て捨ててしまおう。軽蔑されるかもしれないから。パソコンの中も、携帯の中もきれいにする。
シーツを変える。フローラルなバスタオルをさりげなくおく。完璧に冷えたビールと洒落たつまみ。読みもしないデザインに関する本を無造作に転がしておく。
よし、悪くない。

俺はいつも傲慢だった。送ることは勿論、迎えに行くことすらしなかった。ベッドに横たわり、アイツがやって来るのを無言で受け入れていただけだった。これからはアイツをもっと大切にするんだ。
アイツが音楽の話をしたら、その次には俺はコンサートのチケットを手に入れておくだろう。アイツがシルバーのアクセサリーに目をとめたら、その次にはプラチナのアクセサリーを買っておくだろう。
俺がサボテン弁当でいい朝も、アイツがカフェに行きたいなら、カフェで食事する。俺がブラッドメルドー聴きたい夜も、アイツがスカとかメロコアとかそういった類の音楽が聴きたいなら、それでいい。
ワインは白だし、煙草は吸わないし、服は黒だし、ランドだろうがシーだろうがどっちでも構わない。
言うまでもなくチョコレートはガーナだし、
無論プリンタはエプソンだし、
勿論飴は快感な喉飴だ。

いかん。こうしてはいられない。部屋を掃除することに頭がいっぱいで、俺自身をきれいにしていなかった。なんたる失態。こいつめこいつめこうしてやる。
いやいや、違う違う。全然違う。あと30分でまさみが来てしまう。とりあえず風呂に入って身を清めてTVに向かおう。もちろん10分前に!