国語を教えるのは難しい。

自分では分かりきっている事を、それが分からない人に説明するのは難しい。説明すればするほど、本当の意味での正確さが失われる。味わいも失われる。
出来るだけ教えたくない。自然に出来るようになって欲しい。そんなわけで生徒にはできるだけ本を読ませる。自分が好きな読書を人にもさせたいという気持ちもありつつ。
生徒が本を読んでる間、僕も自分の本を読む。何かきかれたら答える。大体きかれるのは単語の意味なので、僕というよりは、僕の電子辞書が答える。俺いらないじゃん、って思わない事もない。でも少しは解説するし、一緒に本を読んで、読書の雰囲気を好きになってもらう事が大事なんだ、と自分に言い聞かせたりする。
それにしても生徒に読ませる本を選ぶのは難しい。友達に薦めるだけだったら適当に出来るけど。そうそう、『お嬢様アイドルの淫れがちな課外授業』。あれ、、かなり、、いいよ。あのリリシズムはヤバい。現代のルバイヤート
それはさておき、普段本を読む生徒ってかなり少ない。そんな生徒に読ませるなら、分かりやすく面白いものでなくちゃいけないし、かといってあまり低俗なものを読ませるのは嫌だ。子供向けの何とか探偵団とか、安っぽい学園ドラマとか絶対許さない。本当はドストエフスキーとかアリストテレスとか読ませたいくらいだから。でもそうはいかないから、子供でも読めそうで、でも実は深いって本を探さないといけない。
今日は中学一年生の女の子に読ませる本を探しに行った。適当に何冊か買ってきて読んでみた。重要なのは性描写に対しての検閲。とはいえ、性描写がない小説って意外に少ない。どこまで許されるのか悩む。中学生一年生の女の子なら大体分かってるんじゃないの?軽い性描写でもひくかな?コウノトリとか言わなきゃいけない?どうでもいいけど紀子様可愛いね。

とある行為が行われた事をにおわせる程度ならかまわないだろう。日曜の朝、ベッドで男女が一緒に目覚めるくらいはいいだろう。逆に真っ最中の描写はさすがに無理。でも「愛しあう」の一言なら大丈夫な気がする。つまりMAKIN' LOVEだよ。悪い事じゃないとか言って。さっきはこんな描写を見つけて迷った。
『夕食のあと、食器をゆすいでいると、チェテウが私の髪に鼻をうめにきた。私はそうやってうしろから抱きしめられるのが苦手だ。安心してしまいそうになる。チェテウが耳たぶをかむので上手く洗いものができない。
「おとなしくして」
私が言ってもチェテウはきかない。
「皿なんかあとにすればいい」
私たちは寝室にいく。』
どうかな。セーフかな。ていうかチェテウ何してんだ、お前は。
同じ本の別の箇所にはこんなSWEETな描写。場所はミラノの高級アパートメント。「私」の27才のバースデーパーティーの直後。
『「会いたいな(I MISS YOU)」
バスタブに腰掛けて、私の首を揉んでくれながらチェテウがいった。午前二時のお風呂場は夜と湯気の匂い。
「誰に?」
何杯ものワインが身体じゅうを駆けめぐっている気がして、私は両手をぶらぶらとふってみる。ちゃぷちゃぷいわないのが不思議だ。
「二十六のキミに」
チェテウは私の頭のてっぺんに唇をつけて言う。
「愛してたんだ、すごく」
チェテウの両手が肩から胸におりてくる。耳元でささやかれ、私は身体をねじってチェテウの唇をふさいだ。』
あっまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい。だから、チェテウよ、お前は何をしちゃってんだ?
まあ、この程度なら中学一年の女の子に読ませてもいいかなって思ってるんだけど、どうかな?ちょっと感覚が麻痺してるから、自分では判断できないよ。