昔話

高校生の頃、親友の浦和君がウチに来て、俺の姉と一緒に3人で飲んだ。
浦和君は同じ女の子に3年間で7回フラれるという猛者だった。すごい良いヤツだった。飲んだのは、その7回目の直後だった。
浦和君は言った。アイツじゃなきゃダメなんだって。幼なじみだし、遠慮がなさすぎてもはや色気も感じないけど、アイツじゃなきゃダメなんだって。アイツにはもう何人か彼氏できちゃったし、今でもいるし、俺はまだCHERRYだけど、アイツじゃなきゃダメなんだって。
俺はちょっとウンザリして、浦和君の世間知らずを非難しつつも、盲目さが恋の本質でもあるし、当時はっきりそう意識はしてなかったかもしれないけど、とにかく浦和君のアムールプュールに感動もしていた。
浦和君の恋話が一段落して、酒も回り、場が崩れてきた時に、浦和君は突然立ち上がって言った。


「お姉さん、女の人もイクんですか?」


と。おい、浦和!!お前、人の姉に何をきいとんねんと。どんだけピュアやねんと。逆にね。すると姉は


「うん。イクよ!!」


おい、姉!!どんだけ気さくやねんと。それからは姉のテクニークアムール講座になった。俺は姉のそんな話はききたくもないので、部屋に帰って寝た。その後浦和君と姉がどうなったかは知らない。多分何もなかっただろうとは思う。
浦和君は後に東北大学に進学した。そこでボランティアサークルに所属して、老人ホームで知り合った女と付き合い、孤児院でのボランティア仲間にその彼女を寝取られた。
後に彼は言った。高校時代の恋はバカだったと。でも最高だったと。
というわけで、俺はピュアなラブなんか金輪際信じない。ピュアさをアピールする女なんて大嫌いだ。嘘つき。ピュアなんじゃなくて盲目なんだ。そして盲目な女は大好きだ。